外国人の在留資格と就職

外国人の在留資格

在留資格は27種類

日本に滞在する外国人は、入国時に滞在目的を明記して申請し、認定を受けねばなりません。これを在留資格(ビザ「査証」)と言います。そして、ビザには、その滞在の目的・条件等に応じて27種類あります。
日本に滞在する外国人は、各在留資格で定められた範囲の活動を、定められた期間で行えます。

これまでの就労ビザの考え方

外国人が日本に入国・滞在するためには、定められた在留資格のいづれか一つに該当している必要があります。
そして、日本で働いて報酬を得られる在留資格(就労ビザ)は、基本的に「単純労働を認めない」という考え方に基づきます。

法改正による就職先の範囲拡大

留学生が日本で就職するために取得できる就労ビザはこれまで、主に「人文知識・国際業務」「技術」等の数種類限られていました。
しかし、今般の法改正により、在留資格の枠組が変り、留学生の就職先の範囲も拡大することになりました。そのポイントを以下に列挙します。

① 在留資格「人文知識・国際業務」と「技術」が一本化

「人文知識・国際業務」と「技術」の就労ビザは、その資格に定められた活動分野における就労経験が求められないことから、「留学」からの変更申請が可能なビザの1つです。

定められた活動の基盤になる知識があればよいため、これまでは学校で文科系の科目を専攻した者が「人文知識・国際業務」、理系専攻者が「技術」で申請するのが一般的でした。

② 在留資格「介護」が新設

日本社会の高齢化の進展に伴って質の高い介護のニーズが増大したことを受け、介護福祉士の国家資格を有する者を対象にする在留資格「介護」が新設されました。

これにより、専門学校等の養成施設を卒業して介護福祉士の国家資格を取得した外国人留学生は、日本で介護職に就けるようになりました。

③ 働きながら「和食」の研究・学習が可能

平成25年(2013年)に「和食」がユネスコ無形文化遺産に登録される等、世界で日本料理への関心が高まっています。

そこで、平成26年(2014年)から、一定の条件を満たした調理師養成施設の留学生について、日本国内で日本料理の調理業務に従事することが特例的に認められました。

これにより、在留資格「特定活動」において2年間、働きながら和食を学べるようになりました。

④ 在留資格「投資・経営」が「経営・管理」に変更

日本で会社を経営したり日本企業で事業管理者として勤務したりする外国人に必要なビザの名称が平成27年(2015年)、それまでの「投資・経営」から「経営・管理」に変更されました。

これにより、会社設立の際、このビザを取得できる会社の事業規模の条件が明確になりました。

外国人留学生の就職に関係する在留資格


外国人留学生が日本で就職する場合、「留学」の在留資格から就労可能な在留資格に変更する必要があります。
そこで、前項「外国人の在留資格」の内容を踏まえ、就労可能なビザについて以下に改めて解説します。

▼ 在留資格「技術・人文知識・国際業務」

● 留学生は高等教育以上の修了が必要

在留資格「技術・人文知識・国際業務」は、留学生が日本で就業するための最も一般的な就労ビザで、学歴では日本の専門学校・大学・短期大学・大学院等以上の卒業者が対象です。

専門学校の場合、「専門士」か「高度専門士」の称号を得ていることが条件です。また、母国で大学を卒業した留学生は、そのまま日本での就職活動が可能です。さらに、IT関連分野に就職したい場合、法務大臣が告示したIT資格試験に合格していれば、学歴は問われません独立行政法人情報処理推進機構(IPA)「外国人IT技術者の日本での雇用に係る諸手続き」参照)

● 学習内容と業務内容の関連性が重要

入国管理局の在留資格変更審査では、専門学校・大学等で学んだ内容と就職後に従事する業務内容の関連性が問われます。

例えば、理系学科で学んだ留学生が化学メーカーで分析・品質管理等の業務に就く、機械工学を学んだ留学生が機械開発等の業務に就く等のケースは、学習内容と職業の関連性が明らかであるため、在留資格が認められ易くなります。文系の場合、法律学・経済学・社会学等の人文科学系の知識を活かして一般企業の管理部門等に就職する他、在留資格「外国の文化」を必要とする業務(通訳・翻訳・語学指導・企業の海外取引業務等)にも従事できます。

● 就労ビザ取得に向けて配慮する企業

専門学校の職業教育の対象領域において、調理師・美容師等の一部の分野は現在、就労が制限されています。

しかし、多くの日本企業では、優秀な海外人材を求めていることから、彼らが「技術・人文知識・国際業務」ビザによって日本で就労できるよう、学習内容と職業の関連づけを様々に思案して配慮する企業が増えています。

● 在留資格「技術・人文知識・国際業務」で就労可能な主な職業

【技術系】コンピューターエンジニア・機械工学技術者・電気工学エンジニア・ウェブデザイナー・工業製品デザイナー・システムエンジニア・化学リサーチ結果を踏まえた商品開発等

【人文知識・国際業務系】貿易業務・デザイナー・語学学校教員・証券会社アナリスト・調査会社リサーチャー・商社等の海外市場リサーチ&マーケティング・国際広報・証券会社トレーダー等

▼ 在留資格「介護」

● 在留資格「介護」新設によって留学生の就労が可能

専門学校等の介護福祉士養成施設を卒業した留学生が介護職に従事できる在留資格「介護」が新たに創設されました。

● 介護職に関する基礎知識①――介護福祉士の仕事

介護福祉士は、社会福祉専門職の介護に関する日本の国家資格です。介護を必要とする高齢者や障碍者に対し、スムーズな日常生活を送れるよう、食事・入浴・排泄・歩行等の支援を行う他、介護プランを立案したり介護者に助言して精神面での支えになったりすることが主な仕事です。

● 介護職に関する基礎知識②――介護福祉士の要件

現在、介護福祉士養成施設で2年以上学んだ者は、卒業と同時に介護福祉士の国家資格が与えられます。養成施設は、日本の厚生労働大臣が指定する学校で、専門学校の他に大学・短期大学があります。養成施設の入学資格は高等学校修了者であるため、留学生は母国で高校を卒業していることが条件です。

しかし、平成34年(2022年)以降、養成施設を卒業するだけでなく、卒業後に介護福祉士国家試験を受験することが義務づけられます。

そのため、それまでの移行措置として、平成29~33年度(2017~2021年度)の養成施設修了者は卒業後5年間、取り敢ず(暫定的に)介護福祉士の国家資格が与えられます。したがって、卒業後5年の間に国家試験に合格するか、卒業後5年間継続して介護職に従事すれば、介護福祉士の国家資格を保有できます。

● 在留資格「介護」による主な就職先

特別養護老人ホーム・介護老人保健施設・デイサービスセンター・身体障碍者施設・訪問介護サービス事業者等

▼ 在留資格「医療」

● 日本の医療資格が必要

在留資格「医療」は、「医療にかかわる業務に従事する活動」が可能な就労ビザです。

医療ビザを取得するためには、定められた日本の医療資格を保有している必要があります。

● 医療ビザを取得できる医療資格

医師・看護師・准看護師・歯科医師・歯科衛生士・助産師・薬剤師・保健師・理学療法士・作業療法士・言語聴覚士・診療放射線技師・臨床工学技士・義肢装具士・視能訓練士

● 日本の医療系教育機関で学んで国家試験に合格することが必要

留学生は、厚生労働大臣が指定する上記資格の養成施設を卒業し、国家試験に合格する必要があります。

このうち、医師・薬剤師の養成施設は大学だけで、就業年限(教育期間)は6年です。医師・薬剤師以外は3年以上で、専門学校にも多岐分野に亘って養成施設があります。

▼ 在留資格「経営・管理」

● 会社の経営者・管理者として働く資格

在留資格「経営・管理」は、日本で「貿易その他の事業の経営を行い、または当該事業の管理に従事する活動」を行う外国人に与えられる就労ビザです。言い換えれば、日本で会社を経営するか、日本の会社の国内事業所で業務管理を行う立場にある外国人に与えられる在留資格です。

● 留学生の日本での起業も可能

日本で会社を経営するための審査を受ける場合、事業内容は言うまでもなく、経営者のそれまでの職歴や知識・技能の水準が判断材料になりますが、基本的に学歴は問われません。

ただし、専門学校・大学等で経営や事業創造を専攻した場合、相応レベルの「知識」としてプラスの判断材料になる可能性は充分にあります(職歴は必須でありません)。したがって、日本の学校を卒業した後、就職せずに日本で起業する留学生も存在します。

● キャリアアップによって取得可能

企業の管理者として「経営・管理」ビザを取得するためには、3年以上の実務経験の他、業務内容が管理業務に該当するかどうかが厳しく審査されます。

そのため、新入社員として就職する留学生において、「経営・管理」ビザは、基本的に関係ありません。ただし、入社後3年以上活躍して相応の役職に就くと、「技術・人文知識・国際業務」ビザ等の切り替え時期に合せて「経営・管理」ビザに変更申請できます。

● 在留資格「経営・管理」で従事可能な主な職業

会社の経営者・管理者(代表取締役・取締役・監査役・部長・支店長・工場長等)

▼ その他の在留資格「特定活動」「技能」等

● 和食料理人として2年間就労可能

在留資格「特定活動」は、他の在留資格に該当しない場合も、日本に在留する理由があると認められる場合に与えられる就労ビザです。したがって、その種類・内容はかなり多岐に亘ります。

留学生の就職に関する例を挙げれば、卒業後も就職活動を行う場合にこのビザを取得できる他、日本の調理師養成施設修了者が2年間 日本料理店等で働きながら和食を学ぶことがこの「特定活動」ビザで認められています。

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